
オフィスレイアウトで重要な消防法・建築基準法・寸法について
オフィスの内装はデザイン性だけでなく、寸法を考慮しないと法律違反や業務効率の低下など、支障をきたす恐れがあります。そのため、レイアウトの際は安全性と快適性を考慮した基準寸法を理解し取り入れましょう。 本記事では、オフィスレイアウトで必要な寸法を通路、会議室、執務室、個人の作業スペース、ユニバーサルデザインを取り入れるときに分けて紹介します。
オフィスレイアウトの消防法・建築基準法について
オフィスは従業員が安全・快適に働ける環境に整えてある必要があります。そのため、通路をぎりぎり人が通れる程度にしてワークスペースを広くするなど、勝手にレイアウトを変更できるものではありません。 また、オフィスレイアウトでは、以下の法律を考慮する必要もあります。
- 労働安全衛生法
- 建築基準法
- 消防法
- 事務所衛生基準規則
これらを念頭に置いた寸法を基準寸法といい、オフィスレイアウトでは、基準寸法にのっとった上で、快適に働ける空間を造る必要があります。
押さえておくべき標準的な人の寸法
オフィスレイアウトの基準となるのは法律だけでなく、人が問題なく利用できるかどうかもあります。そのため、まずは、日本人の平均的な寸法を理解しましょう。 厚生労働省の調査報告「令和元年国民健康・栄養調査報告」によると、日本人の寸法は以下の通りです。[注1]
- 横幅:約450~500mm
- 身長:男性163.1cm、女性151.3cm
[注1]厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査報告(第2部 身体情報調査の結果)」 上記の寸法から従業員が何人通るかに応じた、必要な通路幅がある程度計算できます。
オフィス通路で最低限必要な寸法とは

オフィス通路の寸法は、何人の従業員が通るかよりも、まず建築基準法で定められている基準を遵守する必要があります。建築基準法施行令119条(廊下の幅)では、以下のように定めています。[注2] “病院における患者用のもの、共同住宅の住戸若しくは住室の床面積の合計が百平方メートルを超える階における共用のもの又は三室以下の専用のものを除き居室の床面積の合計が二百平方メートル(地階にあっては、百平方メートル)を超える階におけるもの” この場合、下記の幅が定められています。
- 両側に居室がある廊下における場合:1600mm以上
- その他の廊下における場合:1200mm以上
つまり、この規模のオフィスの廊下で両側に部屋がある場合は1.6m以上の幅が必要になります。 オフィスの床面積の合計が百平方メートル以下の場合は、次の基準を参考にしましょう。
- 一人のみ通行する通路:600mm~
- 二人がすれ違う通路:1200mm~
人の横幅が500mm程度のため、上記が通路に必要な寸法です。ただし、体格や荷物の有無によっては圧迫感も生まれます。 余裕のある通路幅としたい場合は以下の寸法を基準としてください。
- 余裕をもってすれ違える通路:1600mm~
メイン通路などは上記を基準にレイアウトすると、快適に通行できます。なお、着席時は背中合わせになる椅子や壁との間の通路に、以下の幅が必要です。
- 着席時の寸法:500mm~
以上の寸法を基本として、オフィスデザインを検討します。 [注2]e-Gov法令検索「建築基準法施行令(第百十九条(廊下の幅)」
デスク間の通路の寸法
デスク間の通路の寸法では、横並びのデスクとデスクの間、縦並びで椅子が背中合わせになるデスクの間の2つの寸法が考えられます。それぞれ、適した幅は以下のとおりです。
- 横並びのデスク間の寸法:600mm~(1200mm~)
- 縦並びのデスク間の寸法:1500mm~(1800mm~)
なお、上記は通路を利用できるものの窮屈な印象です。余裕を持たせたい場合は、カッコ内の寸法を参照してください。 横並びのデスク間の寸法のうち、メイン通路は1200mm以上、それ以外は600mmとメリハリをつけると空間を上手に活用できます。
デスクと壁の通路の寸法
デスクと壁の間の通路も、デスクが横向きか、縦向き(椅子の後ろに壁があるか)により、必要な幅が異なります。
- 横並びのデスクと壁の寸法:600mm~(1200mm~)
- 縦並びのデスクと壁の寸法:600mm~(1800mm~)
デスクと壁の間に人の行き来があったり、壁に掲示物などを設置していたりするときは、通行しやすいようにカッコ内の寸法を採用すると良いでしょう。 なお、縦並びのデスクの間を誰も通らないなら、600mmの幅があれば起立時も着席時も問題はありません。また、集中が必要な業務などで人の行き来を制限したいなら、あえて通路幅を狭くするのも有効です。
デスクとキャビネットの通路の寸法
デスク周辺にキャビネットなどの収納を設置しているなら、広めの寸法を確保しましょう。デスクの置き方別の寸法は以下のとおりです。
- 横並びのデスクとキャビネットの寸法:1350mm~
- 縦並びのデスクとキャビネットの寸法:1500mm~
キャビネット周辺は書類を探すため長時間、人が行き来することもあります。また、しゃがんで下に収納されたものを取ることもあるため、デスクで作業する従業員に干渉しない程度の距離が必要です。合わせて、書類を探す人とは別に通行する人も想定しレイアウトしましょう。
デスクとコピー機の通路の寸法
コピー機も業種によっては頻繁に利用するため、通路幅を広めに確保する必要があります。
- 横並びのデスクとコピー機の寸法:1200mm~
- 縦並びのデスクとコピー機の寸法:1400mm~
コピー機もキャビネットと同様に、用紙やインクの補充など、しゃがむ動作が発生します。そのため、上記のような余裕のある寸法の方が快適です。
会議室で最低限必要な寸法とは
会議室の寸法は机のレイアウトにより異なります。ここで、スクール形式と対面式の2つの寸法を解説します。
スクール形式の寸法
スクール形式とは、学校のように机と椅子が全て前方(演台)を向くレイアウトです。スクール形式の場合、椅子と机の距離を十分に取らないと、起立時に後ろの机にぶつかるため注意しましょう。必要な寸法は以下のとおりです。
- スクール形式の机間の幅:950mm~
なお、机と壁の間の寸法は600mm~開けると、人一人が通れる幅を確保できます。なお、ドアがある場所ではさらに距離が必要です。
対面式の寸法
対面式の場合、壁を背にする席と演台やホワイトボード付近の席に分かれ、それぞれ適した寸法が異なります。
- 壁を背にする席:600mm~
- ホワイトボード付近の席:1050mm~
会議室は頻繁な通行を考慮する必要はないため、壁に背を向けている席なら600mmの余裕があれば問題ありません。しかし、ホワイトボード付近は話者の移動などもあるため、ある程度余裕がないと使いづらくなってしまいます。
応接室で最低限必要な寸法とは
来客を案内する応接室や役員室は寸法に余裕をもたせ、ゆっくりと寛げるようにしましょう。ソファとテーブルを設置する際の寸法は以下のとおりです。
- ソファとテーブルの間:300mm~
300mm程度余裕があると、ソファとテーブルの間を通りやすく、座った際もゆとりがあります。なお、応接室が広く重役の対応が多いなら、500mm~と、さらに余裕を持たせてもよいでしょう。
オフィスで一人当たりの作業スペースの寸法
オフィスのレイアウトでは、通路や会議室の寸法だけでなく、従業員一人ひとりの作業スペースも大切です。機能性だけでなく、業務別に適した広さも意識するとより働きやすくなります。
デスクの縦の寸法
デスクの縦の寸法は、従業員の業務内容によっても必要なサイズが異なります。目安は以下のとおりです。
- 600~650mm:ノートパソコンと少量の資料を置ける程度
- 700~750mm:デスクトップパソコンと書籍などの資料を置ける程度
パソコンの利用がメインの仕事での場合、縦幅600mm~のデスクで十分でしょう。 しかし、税務・法務など、紙ベースの資料を頻繁に使う事務系の職種なら、700mm~など、ある程度広さのあるデスクの方が業務もしやすくなります。
デスクの横の寸法
デスクの横の寸法は1000~1200mmが目安です。それぞれ横幅が変わるとどの程度の違いがあるか解説します。
- 800mm:デスクトップパソコンが置ける程度。縦幅がないと狭く感じる
- 1000mm:デスクトップパソコンと電話機、少量の資料が置ける程度
- 1200mm:デスクトップパソコンと電話機、電卓、複数の資料などが置ける
- 1400mm:デスクトップパソコンと電話機、複数の資料を置いても余裕がある
デスクの横の寸法も業務内容により適したものは異なります。しかし、1000mmを下回る場合、隣との距離も近くなるため、パーソナルスペースの観点からも快適ではありません。1400mm程度確保できれば、隣との距離を気にせず、必要な資料を広げて作業ができます。 なお、長机を複数人で利用する際も、上記を目安に距離を取りましょう。
オフィスで車椅子を利用するときの通路幅
オフィスにユニバーサルデザインを取り入れる際は、車椅子の動作を考えた寸法が必要です。一般的な車椅子の寸法は以下のとおりです。
- 全長:1200mm
- 全幅:700mm
- 全高:1090mm
車椅子の場合、方向転換時に回転させる必要があるため、通路は以下の寸法がなければいけません。
- 通常の通路:1000mm~
- 横並びの机と机の間の通路:1500mm~
- 縦並びの机と机の間の通路:1800mm~
また、大型の車椅子を180°回転させるためには、縦1500mm、横1800mmの空間も必要です。 これらを考慮し、作業スペースは無理のない姿勢で、車椅子を問題なく動かせるだけの空間が求められます。 なお、ユニバーサルデザインを採用する際は、寸法だけでなく家具の選び方も重要なため、オフィスレイアウトの専門家に相談してみましょう。
オフィスを広く見せる方法
オフィススペースを広々と確保できれば、従業員はゆったりと仕事ができます。しかし、現実的には賃料の都合もあるため、基準寸法を確保するのが精一杯のことも多いでしょう。 以下のようにオフィスレイアウトを工夫すれば、広さの問題を緩和することも可能です。
- パーテーションで作業スペースを区切る
- フリーアドレスを採用する
- 設置する家具や配置方法を変えて広く見せる
オフィスレイアウトは見た目だけでなく、業務効率の向上やコミュニケーションの活性化などを計る上でも重要であり、仕事に多くの影響を及ぼします。 手狭な物件だからと諦めるのではなく、少ないスペースを有効活用する工夫が大切です。
オフィスの内装を工夫して働きやすい環境に
オフィスの内装を考える際は、デザイン性の高さだけでなく従業員が働きやすい基準寸法を意識することが必要です。寸法は広く取れれば良いに越したことはないものの、賃貸物件などでは難しい事情もあるでしょう。 とはいえ、オフィスデザインは仕事の成果を左右する重要な要素です。新しいオフィスに移転する際や、手狭なオフィスを快適に使いたいときは、オフィスデザインの専門会社に相談するのがおすすめです。